民事裁判書類電子提出システム(mints)とは
2025年から、日本の民事裁判に mints(ミンツ) という新しい電子提出システムが本格導入されます。
これは 裁判所へ提出する書面をオンラインで提出できる仕組み です。
これまでの民事訴訟では、
- 書面の印刷
- 綴じ作業
- 副本の作成
- 裁判所への持参・郵送
といった紙中心の作業が当たり前でした。
mints は、この一連の作業を オンライン上で完結させる ために設計されています。
原則として PDF 形式で提出する ことになりますが、
※証拠資料や元データなど、必要に応じて Word・Excel ファイルを添付できる場合もあります。
行政手続における「電子申請窓口」のように、
民事裁判にも電子提出の窓口ができる イメージです。
mints導入の背景 〜なぜ必要になったのか〜
mints が導入される背景には、大きく3つの理由があります。
紙中心の作業が限界にきている
民事裁判は書面の量が多く、
- 印刷・コピー
- 綴じ作業
- 相手方への送付
- 記録の保管
など、大量の紙と人手が必要でした。
裁判所側でも紙の記録管理が業務負荷の大きな原因となっており、
「紙からの脱却」 が長年の課題になっていました。
司法手続のデジタル化(司法ICT化)の推進
行政手続がマイナンバーカードやe-Taxを中心に電子化してきたように、
裁判所でも 手続の効率化とペーパーレス化 が求められてきました。
※オンライン期日(Teams の利用)がコロナ禍で一気に普及し、
司法のデジタル化を後押しした側面もあります。
mints は、この司法ICT化の中核として設計されたシステムです。
裁判所の紙記録管理の負担が非常に大きい
裁判所内部では、
- 紙記録の量が膨大
- 保管スペースの不足
- 記録検索の手間
- 共有が難しい
など、紙記録の維持そのものが限界にきています。
電子化は不可避の流れになっていました。
mintsの導入スケジュールと今後のロードマップ
mints は 2025年から段階的に利用範囲が拡大 されます。
ただし、現時点では 訴状の電子提出は全面導入ではありません。
2025年:電子提出の本格スタート(対象は限定的)
まず対象となるのは、主に以下の書類です。
- 準備書面
- 証拠説明書
- 添付書類(PDF が中心)
- 裁判所との事務連絡書面(予定)
訴状や反訴状などの申立書類については、裁判所ごとの段階導入となり、2025年時点では全ての裁判所で利用できるわけではありません。
改正民事訴訟法の方針としては:
「2025年度中を目標に、オンライン申立て(訴状提出など)にも対応していく」
とされていますが、実際の運用は段階的に進む形です。
2026〜2027年:対象範囲の継続拡大
今後数年かけて、電子提出可能な書類が広がり、
- 多くの申立書類
- 期日指定に関する申請
- 訴状・反訴状など主要書類(段階導入)
- 電子送達の拡大
- 書面管理・閲覧の電子化
といった方向へ拡張される予定です。
当面は“電子と紙の併存期間”が続く
本人訴訟(弁護士なし)の場合などは mints を使えないため、
裁判所が 電子提出→紙にプリントアウトして郵送 という運用が行われます。
そのため、当面は 電子と紙のハイブリッド運用 が続きます。
将来の方向性(検討段階)
司法デジタル化の議論では、次のような構想が示されています。
- 記録の完全電子化
- Webでの記録閲覧
- 判決書等の電子送達拡大
- 裁判所内事務のさらなる電子化
- 補助者(事務員)アカウント機能の強化
mints は、こうした「将来の電子裁判」の基盤となるシステムです。
まとめ
mints(民事裁判書類電子提出システム)は、
これまで紙を前提としてきた民事裁判の提出手続きを
オンラインへ移行させるための新しい仕組み です。
- 原則 PDF で提出(必要に応じて Word/Excel 添付も可能)
- 印刷・綴じ・郵送といった作業が大幅に削減
- 裁判所に行かずに提出できる
- 手続全体がスピーディーになる
- 将来の電子送達・電子記録化の基盤になる
というメリットがあります。
ただし、2025年の段階では 訴状の電子提出は全国一律で可能になるわけではなく、段階的な導入 です。
次の記事では、
「mintsによって変わること・変わらないこと」 をさらに具体的に解説します。


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